海外で働くということ
はじめて仕事を得る
ヒツジは当初10カ月程の留学予定だった。
だが、
10カ月を前に留学の延長を決意する。
日本に帰りたくなかった。
しかし先立つものがない…
留学はとにかくお金がかかるのだ。
とりあえず、
使わないでおいてあった預金を使い、
公立の専門学校にて調理を学ぶことにした。
理由は…
調理なら難しい英語は必要なかろう…。
それが大きな誤算だったことは、
のちに気づくのだが。
留学生には週40時間の労働が許可される。
だが、
日本レストランやお土産屋以外で、
英語が堪能でない日本人が、
仕事を得るのは難しい。
たいてい、
帰国する日本人が、
友達に仕事を譲る形が多いかも。
残念ながらヒツジには日本人の友達はいない。

この記事で書いた通り、
ヒツジは常に日本人から離れていた。
とは言え働かないとお金がない。
あせってはいたが、
ひょんなことから仕事はやってきた。
調理コースの実習先で、
ヒツジにお呼びがかかったのだ。
基本、
普通に働いていたら、
日本人は仕事熱心だと思われる。
とりあえず、
時間厳守で返事はYES!これさえあれば。
英語がわからない
専門学校のコースを選ぶとき、
なぜ調理にしたかと言うと、
先にも述べた通り、
調理なら難しい英語がなかろう?
という思い込みだった。
これは大きな誤算だった。
厨房はとにかく忙しい。
言葉の分からない人間に、
気を配る余裕なんてミジンもない。
ましてや、
西洋の文化は多様で、
島国日本から出てきたヒツジには、
調理の手法を推測するのは難しかった。
さらに状況が悪いことに、
ヒツジの上司は、
スコットランドとアイルランドからの移民。
英語を話すが、英語とは思えない。
例えば、
Sundayはサンデーだが、
スコティッシュはこれを「スンデー」と言う。
ヒツジはパティシエ見習いだったので、
パティシエ厨房に勤めていたのだが、
カスタードは「クスタード」と発音される。
上司の英語→同僚の英語→ヒツジの脳みそ
という段階がつねに必要だった。
すべてはヒツジが悪いのだけれど、
結局ここでの仕事は数カ月でクビとなった。
でも数カ月は働けたのだ。
時給20ドル…悪くなかった。
しかも現地では有名なホテルだったので、
とりあえず、
働けたことをご近所さんは褒めてくれた。
ここで働けたことはヒツジ史上ミラクルなことのひとつ
差別と偏見
先にも書いたが、
このホテルは現地では、
結構有名なアイコン的ホテルだ。
当然、
現地人でも働きたい人は山ほどいる。
ヒツジが通っていた専門学校にも、
もちろんオーストラリア人の学生はいる。
だが、
このホテルで働ける人はほぼ皆無。
「日本人」というだけで「信用」される。
これは事実だ。
ましてやヒツジは他の学生よりも年齢が上だった。
プラスαの信用度アップだ。
そして日本で社会人としてもまれていたから、
仕事をくれたのだと思う。
見ての通り大きなホテルなので、
シェフをはじめ、
掃除・警備など多岐にわたる雇用があった。
掃除に関しては、
白人はいなかった。
オーストラリアが差別のない国と言われるが、
実際働くと大間違いである。
白人至上主義はつよく残る。
ちなみにその中で、
黄色人種はほぼ底辺である。
シェフ仲間からは特に人種差別はなかった。
それぞれ手に職をもっているわけだし、
そんなことに構っている暇はない。
ただ、
更衣室はすべての労働者が集まる。
そこでのいじめは結構あった。
黄色人種の留学生が、
なんで厨房で働けて、
私が掃除なの?とどなられた。
ヒツジのロッカーのカギを壊され、
荷物がとれなくなることもあった。
ヒツジを推してくれたのは、
当時の実習担当シェフであったが、
雇用は人事部が担っていた。
この人事部の部長が白人女性で、
黄色人種嫌いな人間だった。
とにかく、
授業の合間に「来い」と言われたり、
契約時に不利な状況に追いやられたり、
いろいろとあったが、
今となっては良い経験である。
ちなみに、
オーストラリアで非正規雇用が、
仕事をクビになることはいとも簡単だった。
シフトから名前が突然消える。
それで「終わり」である。
そのため、
非正規雇用はかなり給料が高い。
「くび」になるショックはあるものの、
(英語力がないゆえの自業自得だったし)
時給の高さは日本の比ではなく、
ヒツジも授業料と生活費をかなり稼いだ。
それはそれで「あり」な気もする。
とにもかくにも、
海外で非正規雇用で働くならば、
差別に負けない強さと、
仕事を逃さない英語力は必須である。
もしくは、
日本人とちゃらちゃらして、
日本料理屋かお土産屋で働くかだけれど、
どうやらそういう場所は、
時給は高くないらしい…。
ひつじ のROOM - 欲しい! に出会える。 (rakuten.co.jp)
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